このページでは夏場に起こることが多い、犬の熱中症・熱射病の症状、原因、治療方法、予防方法を解説いたします。
ただし、あくまでも参考として捉えてください。
決して当ページの内容だけで素人判断はせず、問題がありそうな場合は速やかに獣医師に相談してください。
症状
犬が熱中症・日射病になると、呼吸が荒くなり、口を大きく開けて、ハアハアとあえぐような荒い呼吸をしたり、大量のよだれを出します。
直腸温が40度以上に上昇し、脈拍は速まり、目や口の粘膜が充血します。
熱中症が更に進行すると、血の混じった嘔吐や下痢、痙攣、湿疹、呼吸不全などを引き起こし、そのまま放おっておくと、最悪の場合はショック症状を引き起こし命に関わる事も珍しくありません。
原因
犬は人間と違い、汗をかくことよっての体温調節ができません。
暑くなると舌を出してハアハアと呼吸して、唾液を蒸発させることによる気化熱で体温を下げます。
体温の調節を呼吸に頼るしかありませんので、熱を放出しにくいのです。
夏の車内での放置
犬の熱中症で最も多いパターンが、車内での留守番で発生します。
夏場にエアコンを止めた状態になった車内は、あっという間に温度が上昇します。
犬は暑さに弱いため、たった数分でも熱中症になってしまうことがあります。
エアコンをつけていたからといって、安心はできません。
ZIPという番組に出演していたZIPPEI兄妹が、車内での熱中症で亡くなった事故はご存知の方も多いかと思いますが、エアコンを掛けた状態で留守番させていたのにもかかわらず、何らかの原因でエアコンが停止してしまったために死んでしまったようです。
また、エアコンがしっかりと動いていても、ケージの場所によっては、十分に冷気が届いていない場合があります。
人間の座席が涼しいからといって、犬のケージの場所も快適だとは限りませんので、ケージの場所もしっかり冷却されているか調べておきましょう。
エアコンではなく、窓を少し開け、換気する方法で留守番させる方もいらっしゃいますが、炎天下の中、窓を開けただけでは換気が不十分な場合も多いので、気をつけましょう。
また、エアコンをかけ続けるには、キーをつけたままにする必要があることにも注意が必要です。
その時に犬が動いて、ロックを掛けてしまうことがあります。
私の飼っているボーダー・コリーも、買い物の荷物を車から降ろそうとした時に、オートロックを掛けてしまい、人間がドアを外から開けられなくなったことがあります。
15分ほど粘って、自分でウィンドーを開けたのでなんとかなりましたが、もし、飼い主が近くにいない時にウィンドーを開け、そこから逃げ出したらと考えると怖いですね。
閉めきった室内での放置
昼間、働きに出られている方の場合、室内で留守番させていることになるかと思いますが、閉めきった室内でエアコンを止めていると、かなりの室温になります。
エアコンをつけておけば安心かというと、そうではなく、犬のケージの場所までしっかり涼しくなっているかよく確認しておきましょう。
また、レアケースですが、エアコンをしっかりとつけていても、落雷や停電のためにエアコンが止まってしまい熱中症になる不幸な事故も考えられますので、停電や落雷は普段から意識しておきましょう。
炎天下での外飼い
外飼いの犬の場合、風通しが良く木陰になる場所に犬舎を設置しましょう。
水もふんだんに飲めるようにしておきます。
自由に入ることができるプールを用意してあげられれば、なお良いでしょう。
プールは何も本格的なものでなくても、大きなプラスチックの衣装ケースやタライなどで代用できます。
炎天下の散歩
暑い日中の散歩も熱中症の原因になります。
犬は人間よりも地面との距離が近いぶん、暑く焼けたアスファルトの照り返しの影響を大きく受けます。
足の長い大型犬よりも、足の短い小型犬のほうが影響は大きいです。
肉球がやけどをおってしまうこともありますので、昼間の散歩は極力避けるようにしましょう。
治療
犬の異常を見つけたら、すぐに体を冷やす応急処置を行いましょう。
ホースやシャワー、バケツ等で体に水を掛け冷やします。
冷やさないまま病院へ向かっても、更に症状が悪化してしまうことがありますので、病院へ連れて行く前に、まず、冷やしましょう。
動脈部分を氷で冷やすことも効果的です。
四肢の付け根部分に触るとドクドクと脈打っていてひときわ高い体温になっている部位が動脈部分です。
人間で言う脇の付け根と、股の付け根になります。
意識がある場合は、たくさんの水を飲ませましょう。
熱中症の初期の状態ですと水で体を冷やした後、涼しい場所へと移動させれば大丈夫ですが、熱中症になってから長い時間経っている場合、すぐに動物病院に連れていかなければ命に関わります。
応急処置
- まず、犬を涼しい場所や風通しのいい場所へ移します。
- 次に犬の体に水を掛けたり、濡れたバスタオルで包む、保冷剤や氷で動脈を冷やすといった体温を下げる処置を行います。
- そして、濡れタオルや水枕などで体を冷やしながら、動物病院へと急ぎます
応急処置を施して症状が落ち着いても、また体調が急変することがあります。
大丈夫そうに見えても、動物病院で診察を受けましょう。
熱中症にかかりやすい犬
寒い地域原産の犬
グレート・ピレニーズやアラスカン・マラミュートのような寒い地域の犬種は、冬の寒さには大変強い反面、暑さには弱いです。
このような犬種は日本での外飼いには適していませんので、室内で飼育しましょう。
マズルの短い犬
シー・ズーやチベタン・スパニエルなどの短頭犬種は、マズルの長い犬に比べ熱中症になりやすい犬種ですので、特に注意しましょう。
短頭犬種は、夏場は飛行機にのせることができないようです。
子犬・老犬
例え暑さに強い犬種であっても、子犬はまだ未発達ですので、熱中症にかかりやすくなっています。
また、老犬も体温の調節が苦手になってきています。
外飼いが可能な犬種でも、老犬になったら家の中で余生を過ごさせてあげましょう。
肥満の犬
肥満の犬は体内に熱がこもりやすく、体に負担もかかりやすいため、熱中症になりやすくなっています。
予防方法
車内
なるべく車内に残さないようにします。
どうしても車内に残す必要がある場合は、地下駐車場などの直射日光が当たらない駐車場を選んで止め、犬が逃げない程度に窓を開けて通気性を良くしましょう。
水も飲めるように、用意しておきましょう。
長期間、車から離れることはせず、すぐに戻ってあげましょう。
室内
家で留守番をさせる場合はカーテンを閉め、エアコンを付けて室温が上昇しないようにしましょう。
ケージの中に入れた状態で留守番をさせる場合は、ケージの場所が快適な環境になっているかしっかり考えましょう。
暑すぎる場所にケージを設置すると、エアコンをつけていても熱中症になってしまうことがありますし、エアコンの冷気が直接当たる場所だと冷えすぎになります。
飲み水はたっぷりと用意しておきましょう。
ひんやりとしたアルミプレートも効果的です。
外飼い
犬舎は直射日光が当たらない場所に設置してあげましょう。
水もたっぷりと用意させてあげましょう。
夏場の外飼いは、犬にとってかなりの負担となりますので、できれば室内で飼ってあげるほうがいいでしょう。
散歩
散歩は早朝と夕方涼しくなってから行くことにしましょう。
水で濡らすことによって気化熱で体温を下げる犬用の服などを着せてあげるとなおいいでしょう。
できるだけアスファルトやコンクリートではなく、土や芝生のコースを選んであげるようにしましょう。